マンションの共用部分に瑕疵があった場合の売主の瑕疵担保責任について

 マンションの所有、管理等を律する法律としては、建物の所有等に関する法律(以下「区分所有法」といいます。)があります。これは建物の一部を対象とする所有権の成立を認めたもので、マンション等の共同住宅で専有部分が販売され区分所有者が複数人になったときに区分所有の法律関係が始まり、建物、敷地、附属施設等の管理を行うための団体が成立します(法3条)。
 そして、この専有部分はとは、構造上の独立性と利用上の独立性を有するもので、規約により共用部分とされたものを除いた部分で、マンション各部屋がこれに該当します。専有部分の範囲については、区分所有法に定めはありませんが、境界を上塗り部分と躯体部分に分けて上塗り部分までが占有部分であるとする上塗り説が通説的見解と言えます。なお、建物に附属して効用上建物と一体の関係にある電気配線のうち各部屋につながる支線部分や上下水道やガスを供給する配管のうち各部屋につながる支管部分も専有部分となります。もっとも、床下のコンクリートスラブの下にあり下の階の天井裏に入らなければ点検、修理を行うことができないような配管については共用部分に当たるとした判例があります(最判平成12年3月21日)。
 これに対して、共用部分とは、専有部分以外の建物部分(法定共用部分)、専有部分に属さない建物の附属物(法定共用部分)、区分所有法4条2項の規定により共有部分とされた附属の建物(規約共用部分)のことをいいます。そして、共用部分は区分所有者による共有となります。なお、ベランダなどは一般的に法定共用部分と考えられていますが、その構造や分譲時の説明内容等から規約共用部分や専有部分と認めた裁判例もありますので注意が必要です(横浜地判昭和60年9月26日、東京地判平成19年7月26日)。
 マンションの専有部分と共有分について以上のとおりなりますが、マンションが譲渡された場合、専有部分の譲渡とともに共用部分の持分も買主に移転することになります。その場合、専有部分に隠れた瑕疵があれば売主に対して買主が単独で瑕疵担保責任を追及することができます。一方、売主が直接管理していない共用部分に瑕疵があった場合にも売主に対して瑕疵担保責任を追及できるかが問題となります。この点について、東京地判平成13年11月14日は、共有部分は売買の目的となっておらず、売主である区分所有者は共用部分について管理組合法人の機関としての立場を別にすれば何らの権限も有していないことから、売主に対して瑕疵担保責任を負わせる根拠はないとして、売主の瑕疵担保責任を否定しました。一方、東京地判平成20年3月27日は、区分所有法15条で共用部分と専有部分の分離処分が原則として禁止され、売買契約において専有部分と共用部分の持分が売買目的物とされており、共用部分の瑕疵が直ちに専有部分の利用等に支障を来すことになったという具体的な事情も踏まえ、売主の瑕疵担保責任を認めました。なお、同事案では、買主は売主だけでなく管理組合に対しても管理義務違反に基づく損害賠償請求(調査費用と共用部分の瑕疵修補費用)をしており、これについても認められています。そして、売主の買主に対する損害賠償義務と管理組合の買主に対する損害賠償義務の関係については不真正連帯債務と判断しました。
 以上のように、裁判例は共用部分の瑕疵について売主の瑕疵担保責任を否定したものと肯定したものがありますが、区分所有者は共用部分の持分も有しており、専有部分と共用部分の持分は分離されずに売買されますので、共用部分の瑕疵についても売主が瑕疵担保責任を負うとするのが妥当と考えます。もっとも、管理責任は管理組合にあり、売主が最終的に管理組合に求償するということを考えれば、共用部分の瑕疵については管理組合に請求するのが適切かもしれません。