下請取引における規制について

 下請法は、親事業者の下請事業者に対する取引を公正ならしめるとともに、下請事業者の利益を保護することを目的として制定されました。そして、下請法の対象となる取引(下請取引)は事業者の資本金規模と取引の内容で形式的に定義しています。具体的には次のとおりとなります。
(1)物品の製造・修理委託及び政令で定める情報成果物・役務提供委託を行う場合
     親事業者            下請事業者
    資本金3億円超        →資本金3億円以下(個人含む) 
    資本金1千万円超3億円以下  →資本金1千万円以下(個人含む) 
(2)情報成果物作成・役務提供委託を行う場合((1)の情報成果物・役務提供委託を除く。) 
     親事業者            下請事業者 
    資本金5千万円超       →資本金5千万円以下(個人含む) 
    資本金1千万円超5千万円以下 →資本金1千万円以下(個人含む)
 
 そして、下請法は、親事業者の義務と禁止事項について定めています。具体的には次のとおりとなります。 
 
(1)親事業者の義務
 ① 書面の交付義務 
   発注の際は,直ちに下請法3条に規定された事項を記載した書面を交付することが必要です。これは、事前に発注する製品の内容や代金等の重要な事項について書面で確定させる趣旨です。
 ② 支払期日を定める義務
   下請代金の支払期日を給付の受領後60日以内に定めることが必要です。これは、親事業者が下請代金の支払期日を不当に遅く設定することを防ぐ趣旨です。
 ③ 書類の作成・保存義務
   下請取引の内容を記載した書類を作成し,2年間保存することが必要です。これは、下請取引に係るトラブル防止と行政機関の検査の迅速さ、正確さを確保する趣旨です。
 ④ 遅延利息の支払義務
   支払が遅延した場合は遅延利息を支払うことが必要です。これは、下請取引において当事者間で遅延損害金について約定することが困難なことから、規定を設けることにより下請事業者を保護する趣旨です。
 
(2)親事業者の禁止行為
 ① 受領拒否
   納品した物品等の受領を拒むことを禁止しています。なお、納品物が仕様書通りでない等、下請事業者の責めに帰すべき事由がある場合は許されます。
 ② 下請代金の支払遅延
  下請代金を受領後60日以内に定められた支払期日までに支払わないことを禁止しています。なお、親事業者は、納品物受領後60日を経過した日から支払いをする日までの期間について、未払額に対して年率14.6%の遅延損害金を支払わなければなりません。
 ③ 下請代金の減額
 あらかじめ定めた下請代金を減額することを禁止しています。なお、納品物に瑕疵があって返品した場合等、下請事業者の責めに帰すべき事由がある場合は許されます。
 ④ 返品
 受け取った物を返品することを禁止しています。なお、納品物が仕様書通りでない等、下請事業者の責めに帰すべき事由がある場合は許されます。この場合は、返品期間については一定の制限があります。
 ⑤ 買いたたき
  類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い下請代金を不当に定めることを禁止しています。価格決定について親事業者と下請事業者との間で十分な協議がされず、また、製造原価等を考慮せず、親事業者が一方的に価格を決めた場合などは買いたたきに該当するおそれがあります。
 ⑥ 購入・利用強制
  親事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させることを禁止しています。例えば、購入しなければ不利益な取り扱い旨示唆して親事業者が下請事業者に購入を要請することなどがこれに該当します。
 ⑦ 報復措置
  下請事業者が親事業者の不公正な行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由としてその下請事業者に対して,取引数量の削減・取引停止等の不利益な取扱いをすることを禁止しています。
 ⑧ 有償支給原材料等の対価の早期決済
  有償で支給した原材料等の対価を,当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日より早い時期に相殺したり支払わせたりすることを禁止しています。これは、下請事業者の資金繰りの悪化を防止する趣旨です。 
 ⑨ 割引困難な手形の交付 
一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交付することを禁止しています。 
 ⑩ 不当な経済上の利益の提供要請
  下請事業者から金銭,労務の提供等をさせることを禁止しています。これは、下請事業者が親事業者のために協賛金や従業員の派遣等により下請事業者の経済的利益が害されることを防止する趣旨です。
 ⑪ 不当な給付内容の変更及び不当なやり直し   
費用を負担せずに注文内容を変更し,又は受領後にやり直しをさせることを禁止しています。例えば、発注後に親事業者が仕様を変更して費用を負担せずにやり直しをさせる場合などがこれに該当します。なお、納品物が仕様書通りでない等、下請事業者の責めに帰すべき事由がある場合は許されます。 
 
 具体的な事例は、公正取引委員会、中小企業料が発行している「下請取引適正化推進講習会テキスト」に詳しく記載がありますので参考になります。