従業員退職時の貸与物の返還、秘密保持、競業避止等の対応について

 従業員が退職する際、会社が貸与した物品について返却を受けることは当然として、その従業員の地位によっては、秘密保持や競業避止、社員の引抜の禁止等について誓約書を差し入れてもらう場合があります。 退職従業員が会社から貸与分を返却することは当然の義務ですが、その際、従業員がパソコン内のデータやメールの履歴を削除してしまう場合があります。業務の引継ぎに支障がなければ問題ないのですが、当該従業員だけが関与していた事業の詳細や顧客とのやりとりがあり、これを保全する必要がある場合があります。そこで、会社としては、就業規則に退職時の業務の引継ぎについて定めるとともに、パソコン内のデータ、メール等を一方的に削除することのないよう業務命令を出すことが必要です。
 また、秘密保持や競業避止については、退職時に誓約書を提出することを従業員に強制することはできませんので、入社時に同様の誓約書をとり、就業規則にも定めておくのが望ましいと言えます。もっとも、その内容によっては、退職者の営業の自由を侵害するものとして公序良俗に反し無効と判断される場合もありますので、内容に注意が必要です。