管理組合が管理費の滞納のある区分所有者に対し、滞納している管理費及び管理規約に定めた違約金等並びに管理費の将来請求をした事案(東京地判令和3年1月22日)

1 事案の概要

 本件は、マンションの管理組合が、管理費の滞納のある区分所有者に対し、管理規約に基づき、未払管理費等と管理規約所定の年18%の割合による遅延損害金並びに違約金(弁護士費用、督促費用等)及びこれに対する民法所定の遅延損害金の連帯支払を求めると共に、今後到来する管理費等及びこれに対する管理規約所定の年18%の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた事案。

2 裁判所の判断

(1)違約金等の認識の有無が請求権に影響を及ぼすかについて

 管理規約は、マンションの区分所有者間の権利義務関係を定めるものであり、区分所有者らの認識の有無に関わらず、建物の区分所有権を取得した者にも当然に効力がおよぶものである(区分所有法46条1項)から、遅延損害金や違約金の定めについても効力が及ぶとした。

(2)将来に履行期限が到来する管理費等について

 管理を5年程滞納し、弁護士の督促にもかかわらず、わずかな金額しか支払いをせず、その後も滞納していることなどから、今後も管理費等を滞納するおそれは高く、そうなると、管理組合としてはまたしても費用をかけて管理費等の支払を求める法的措置を採らなければならない状況に陥ることが予想されるのであるから、管理組合において、当該区分所有者が建物の区分所有権を喪失するまでの将来の管理費等の支払について、予め給付判決を得ておく必要が認められるとし、当該区分所有者が本件建物の区分所有権を喪失するまで、毎月、指定日限り、管理費及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年18%の割合による遅延損害金の支払義務を負うとした。

(3)既払管理費の充当関係について

 後れて支払った管理費は、法定充当(民法491条1項)と異なる合意はないから、法定充当に基づいて遅延損害金に充当する。

3 コメント

 管理費の滞納が長期にわたり、督促に誠実に応じなかったことから、今後の管理組合のリスクを踏まえ、将来請求までみとめられました。