賃料増減額請求について

 賃貸借契約を締結してからある程度期間が経過すると、経済事情の変化等により当初定めた賃料が不相当となる場合があります。こうした場合を想定し、借地借家法は、賃料の増減額請求権について定めています。賃料増減額請求権は、一時借家契約や賃料改定について増額や減額をしないという特約が付されている定期借家契約を除いて、当事者に一定の事情があれば賃料増減額請求を行うことができます。そして、当事者同士の協議が整わない場合は、調停で話し合いが行われ、調停が不調となれば裁判による解決となります 賃料増減額請求は、口頭で行うこともでますが、争いとなった場合に備えて、内容証明郵便等で行うことが望ましいです。そして、賃料増額請求がなされた場合、賃借人は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、自分が正当と認める額の賃料を支払うことをもって足ります。もっとも、増額を正当とする裁判が確定した場合は、賃借人は、支払時期から不足額に年1割の利息を付して賃貸人に支払わなければなくなります。また、賃料減額請求がなされた場合、賃貸人は、減額を正当とする裁判が確定するまでは自分が相当と認める賃料を請求することができますが、減額を正当とする裁判が確定した場合は、賃貸人は、受領時から超過して受領した額に年1割の割合による利息を付して賃借人に返還しなければなりません。
 なお、賃借人が賃貸人に対して賃料減額請求した場合でも、賃貸人は賃貸人が相当と考える金額を賃借人に請求できることから、賃借人が一方的に減額した金額しか支払っていないときは、債務不履行として賃貸借契約を解除されるおそれがありますので賃借人は注意が必要です。現に解除を認めた裁判例もあります(東京地判平成6年10月26日、東京地判平成10年5月28日)。また、賃借人の賃料減額請求に対して、賃貸人が対抗的に賃料増額請求をすることも考えられますが、債務不履行との関係では、賃借人は従前の賃料を支払っていれば債務不履行にはならないものと考えられます。
 参考までに、判例は、サブリース契約における賃料増減額請求についても認めています(最判平成15年10月21日、最判平成15年10月23日、最判平成16年11月8日)。