転貸人の地位を譲渡する場合に転借人の承諾が必要か

 収益物件のオーナーチェンジの場合、賃借人の承諾は必要ありません。これは、オーナーチェンジにより賃貸人(所有者)の地位が変更されても、譲受人が従前のとおり賃貸人としての義務を履行でき、賃借人に特段の不利益がないと考えられているからです。最高裁判例も買主に対して所有権の移転登記がなされれば、買主が賃借人に対して賃貸人の地位を主張することができるとしています(最判昭和33年9月18日ほか)。そして、賃貸人の地位の移転に伴い、敷金関係も譲受人に承継されます(最判昭和44年7月17日)。なお、平成2年4月1日に施行された改正民法605条の2では、このことが明文化されると同時に賃貸人の地位の移転を留保する旨の合意も可能としました。
 さて、本論に入りますが、転貸人の地位が移転する場合、賃貸人の地位の移転のように借主(転借人)の承諾は不要となるでしょうか。転貸人は物件の所有者ではなく賃貸人から契約を解除される可能性もあることから、賃貸人(所有者)の地位の移転の場合と同様に考えてよいか問題となります。この点、最判昭和51年6月21日は、土地の転貸人の地位の譲渡の事案で、譲渡人から転借人に対する譲渡の通知または譲渡についての転借人の承諾がなければ、転貸人の地位について譲渡を受けた者は、転借人に対して転貸人の地位を主張できないとしました。これを逆に解釈すると、譲渡人から転借人への通知または転借人の承諾のいずれかがあれば、転貸人の地位の譲渡を受けた者は、その地位を転借人に対抗することができるということになります。つまり、転借人の承諾は必須ではないということになります。
 もっとも、上記判例は、転貸人の地位の譲渡を受けた者から転借人に対する賃料未払を理由とする建物収去土地明渡請求に関する事案であることから、債権譲渡における対抗要件と同様の考え方をとったものと考えられますが、いかなる事案においても転借人の承諾が不要といえるかは検討が必要と考えます。現実的には、できる限り転借人の承諾を得ることが望ましといえるでしょう。