区分所有法7条の先取特権に基づく配当要求に時効中断効を認めた最高裁判例(最判令和2年9月18日)
1 事案の概要
本件は、マンションの団地管理組合法人が、専有部分を担保不動産競売で取得した区分所有者に対し、建物部分の前の共有者が滞納していた管理費等の支払義務を当該区分所有者が承継したとして、その管理費等の支払を求めた事案。
主たる争点は、管理組合法人が行った先取特権に基づく本件配当要求により、管理費等の一部について消滅時効の中断の効力が生じている否かである。
2 裁判所の判断
区分所有法7条1項の先取特権は、優先権の順位及び効力については、一般の先取特権である共益費用の先取特権(民法306条1号)とみなされるところ(区分所有法7条2項)、区分所有法7条1項の先取特権を有する債権者が不動産競売手続において民事執行法51条1項(同法188条で準用される場合を含む。)に基づく配当要求をする行為は、上記債権者が自ら担保不動産競売の申立てをする場合と同様、上記先取特権を行使して能動的に権利の実現をしようとするものである。また、上記配当要求をした上記債権者が配当等を受けるためには、配当要求債権につき上記先取特権を有することについて、執行裁判所において同法181条1項各号に掲げる文書(以下「法定文書」という。)により証明されたと認められることを要するのであって、上記の証明がされたと認められない場合には、上記配当要求は不適法なものとして執行裁判所により却下されるべきものとされている。これらは、区分所有法66条で準用される区分所有法7条1項の先取特権についても同様である。
以上に鑑みると、不動産競売手続において区分所有法66条で準用される区分所有法7条1項の先取特権を有する債権者が配当要求をしたことにより、上記配当要求における配当要求債権について、差押えに準ずるものとして消滅時効の中断の効力が生ずるためには、法定文書により上記債権者が上記先取特権を有することが上記手続において証明されれば足り、債務者が上記配当要求債権についての配当異議の申出等をすることなく配当等が実施されるに至ったことを要しないと解するのが相当である。