区分所有者が区分所有する部屋を民泊施設として利用している場合の差し止め等について
いわゆる民泊が一定の要件を満たすことを条件に認められてから、区分所有者がマンションの一室を民泊用施設(以下「民泊利用行為」といいます。)として使用し、他の住民とトラブルとなるような事態が発生しています。そして、こうした事態に対処するために、管理組合が原告となって、当該区分所有者に対して、民利用行為の差し止めや損害賠償を請求する裁判が多く提起されています。
こうした民泊利用行為を差し止めたり、損害賠償請求をするためには、まずは、管理規約により民泊利用行為の禁止を明記する必要があります。具体的な条項案については、国土交通省住宅局が規約案を作成し、HPにも掲載しています。なお、現在の管理規約に民泊利用行為の禁止について規定がない場合は、総会決議により規約の改訂が必要となります(区分所有法31条1項前段)。
なお、区分所有者が既に民泊利用行為を行っていた場合は、こうした規約改定の決議の有効性について争ってくる場合があります。具体的には、区分所有法31条1項後段が「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない」と規定していることから、当該区分所有者の承諾を得ていない規約の改訂は無効であるなどと主張します。もっとも、民泊利用行為の禁止は、区分所有者全員に及ぶものであり、民泊利用行為を禁止する必要性(マンション住民の生活の平穏等)と当該区分所有者の不利益を比較した場合、前者が優先されると考えられるので、当該区分所有者の承諾は不要と考えられます。多くの裁判例でも同様の判断をしています。
以上のとおり、民泊利用行為を禁止する管理規約があることを前提に、区分所有者が民泊利用行為を行っていることの証拠(民泊サイトでの募集情報、実際の利用者からの聴き取り、当該区分所有者からの聴き取り等)を揃え、差し止めや調査費用、訴訟費用、弁護士費用等の損害賠償請求をすることになります。管理規約に差し止めや調査費用、訴訟費用、弁護士費用等を請求できる旨規定されていれば、管理規約に基づき請求することができます。仮に、管理規約に差し止めや調査費用、訴訟費用、弁護士費用等について請求できる旨規定されていなくても、民泊利用行為が区分所有法6条1項の規定する「区分所有者の共同の利益に反する行為」に当たるとして区分所有法57条1項に基づき使用の停止を請求することができます。各種費用についても、民泊利用行為を行っている区分所有者の態様が不法行為と評価できればば、これらの費用を損害として請求することができます。