相続法の改正について(一部除き平成31年7月1日より施行)

1 相続による法定相続分を超える権利の承継について対抗要件を必要とした。第三者には債務者も含む。また、民法467条1項の特則として、承継者が単独で債権承継の通知をできるとした。

2 婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の遺贈又は贈与についての持ち戻し免除の意思表示が推定される。相続開始時ではなく贈与時に前記要件を満たしている必要がある。なお、遺留分減殺請求を受けることは否定されない。施行日以前になされた贈与、遺贈には適用されない。

3 遺産分割前に処分された場合でも相続人全員(処分した相続人除く)が同意した場合は、処分された財産を遺産分割の対象に含めることができる。ただし、処分したことについて争いがある場合は適用困難と考えられる。

4 一部分割が認めれる。

5 遺産分割前に各相続人が単独で預金債権の3分の1に法定相続分を乗じた額の払い戻しを金融機関に請求できる。一金融機関当たり上限は150万円。ただし、金融機関が約款により制限も可能。なお、施行日前に相続開始した場合にも適用。
  ※平成31年1月13日施行

6 被相続人の配偶者が相続開始時に被相続人が所有する建物に居住していた場合において、その建物全部について無償で使用及び収益ができるとされた。これは配偶者終身の権利である。ただし、当該建物について被相続人と他者(当該配偶者除く)との共有の場合は配偶者居住権を取得できない。なお、配偶者居住権は配偶者が取得した財産として評価されるので、遺産分割や遺贈等でその評価が問題となる。また、被相続人が配偶者居住権を配偶者に取得させるためには遺贈によることが必要。審判も可。

7 配偶者居住権は譲渡できないが、施設入所などの可能性踏まえ、遺産分割時や遺贈時に一定の場合は買い取り請求ができる旨定めることはできる。配偶者居住権の対抗要件は登記であるが、敷地の所有権を譲り受けた者や敷地の抵当権者等に対抗はできない。
  ※令和2年4月1日施行。

8 配偶者居住権とは異なる制度で配偶者短期居住権が創設された。これは、遺産分割協議を行う場合は、遺産分割により居住建物の帰属が確定する日まで、それ以外の場合は、居住建物を取得した者からの申し入れから6カ月を経過する日までの期間当然に認められる。
  ※令和2年4月1日施行。

9 遺留分減殺請求により取得するのは金銭債権となった。遺留分減殺請求権の行使日から金銭債権として時効にかかる。遺留分減殺請求された者は金銭化するために支払いの期限の猶予の制度が設けられた。対象となる贈与は、相続人については、10年前(当事者双方が遺留分権利者を害すると知ってした贈与はそれ以前の贈与も参入)と変更された。なお、改正前は判例により相続人については贈与の時期は問わず参入されるとされていた。実際の計算の場合、10年前の相続人に対する贈与は遺留分を算定するための財産に加えないが、遺留分侵害額を計算するに際して、贈与を受けた者は遺留分額を計算するにあたりその贈与額を控除する。

10 被相続人の親族の特別寄与の制度が設けられた。これは、被相続人に対して無償の療養看護その他の労務を提供したことにより被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をしたときに、相続開始後、相続人に対し、特別寄与料の請求を認めたものである。この親族には、内縁の配偶者や事実上の養子に類推の余地があるとされる。なお、特別の寄与には財産上の給付は含まれない。請求できる期間は、相続の開始及び相続人を知ったときから6カ月、または相続開始の時から1年である。審判の制度も設けられている。