近隣の新築建物により日照侵害が生じる可能性がある場合の対応について
近隣に新しく建物が建築され、これまで享受していた日照や通風が著しく阻害されると、生活環境が大きく変わり、居住者にとっては耐え難いものとなります。もちろん、居住当時の環境が未来永劫続くことを保証されるものではありませんが、こうした状況を回避するためには、日照を侵害する建物の建築禁止の仮処分等を行うことによる対応が考えられます。
建築禁止の仮処分は、日照侵害の程度が社会生活上一般に受任すべき限度を超えて違法と判断される場合に認められる可能性があります。もっとも、損害賠償請求に比べ、建築禁止の仮処分のハードルは高くなります。そして、この受忍限度の判断に当たっては、①被害の程度、②地域性、③加害回避の可能性、④被害回避の可能性、⑤加害建物の用途、⑥先住関係、⑦加害建物の公法規制違反の有無、⑧交渉経過などが考慮され、特に①②が重視される傾向にあります。この中で特に重要な要素となる被害の程度については、冬至における、被害建物の南面主要開口部の日照侵害の状況を中心に被害の程度が把握され、日影立面図が有力な資料となります。また、地域性については都市計画法上どのような用途地域に指定されているか、その地域の実態としてどのような建物が多く建てられているか(低層住宅か主流か高層の共同住宅が主流か)などが重要となってきます。具体的には、商業地域よりも住居地域の方が日照確保の必要性が高くなり、1、2階の低層住宅が主流の地域に高層の建物が建築される場合などは受忍限度を超えるとの判断に傾きやすくなります。
なお、建築基準法は日照に関する規制として日影規制を定めているので、日影規制の適用がある地域、建物でこれ違反する場合は、受忍限度を超えると判断されることになります。もっとも、日影規制の対象外地域や日影規制の対象内地域の規制対象外建物でも、日影規制を当てはめた場合に日照侵害の程度が著しい場合は、受忍限度を超えて違法と判断される可能性があります。
以上のとおり、日照侵害については、建築差止の仮処分で争うことも可能ですが、日影立面図等の証拠収集に費用と時間がかかり、仮処分のために裁判所に納める予納金も必要となりますので、できる限り交渉による解決を図ることが望ましいと考えます。