遺言執行者について
遺言で遺言執行者が指定されることがあります。多くは、相続人のうちの一人であったり、弁護士等の専門家であったりします。このように遺言執行者が遺言により指定された場合も、その者が当然に遺言執行者に就任するわけではなく、指定された者の就任の承諾が必要となります(民1007条)。そして、一度就任の承諾をすると、勝手に辞任することはできません。辞任するには正当な理由が必要であり、家庭裁判所の判断を仰がなければなりません。なお、遺言執行者は勝手に復任することもできません。
遺言執行者が選任された場合、遺言執行者が遺言の内容を執行する訳ですが、遺言の内容に不満をもつ相続人と対立関係になることもあります。このような場合、相続人が自分の意に沿わない遺言執行者を解任しようとすることもありますが、遺言執行者を解任するにも裁判所による判断が必要となり、自由に解任することはできません。具体的には、遺言執行者が任務を怠った場合やその他解任についての正当事由が必要となります。
任務を怠った場合とは、遺言執行者に課された財産目録の調整・交付義務、財産管理義務、報告義務等の義務を怠ることです。実際に、正当な理由なく長期間これらの義務を怠ったとして解任が認められた例があります。また、解任についての正当な事由とは、遺言執行者に長期間にわたって遺言執行の障害となる事由があること等をいい、疾病、行方不明等が例として挙げられますが、遺言執行者が一部の相続人に加担するなどして公平な遺言の実現が期待できないような事案でも解任が認められています。
以上のように、遺言執行者に選任されると自由に辞任することはできず、また、自由に解任することもできません。なお、遺言執行者がいる場合に相続人や受遺者が遺言の内容と異なる合意をすることができるかという問題がありますが、相続人や受遺者全員の合意があればできると考えられます。