土地が譲渡された場合の袋地(囲繞地)通行権や通行地役権の存続について

 袋地(他の土地に囲まれて公道に通じない土地)の所有者や通行地役権の設定を受けた者が、土地が譲渡されたことによって袋地(囲繞地)通行権や通行地役権の行使ができなくなるとすれば大変な不利益を受けることになります。まず、袋地通行権が消滅するかについては、最判平成2年11月20日は、「共有物の分割又は土地の一部譲渡によって公路に通じない土地(以下「袋地」という。)を生じた場合には、袋地の所有者は、民法213条に基づき、これを囲繞する土地のうち、他の分割者の所有地又は土地の一部の譲渡人若しくは譲受人の所有地(以下、これらの囲繞地を「残余地」という。)についてのみ通行権を有するが、同条の規定する囲繞地通行権は、残余地について特定承継が生じた場合にも消滅するものではなく、袋地所有者は、民法210条に基づき残余地以外の囲繞地を通行しうるものではないと解するのが相当である。」として、囲繞地通行権が消滅しないとした。
 一方、通行地役権については、民法177条により原則として登記がなければ第三者に対抗することができません。では、登記が無い場合に一切通行地役権を主張できないかというと、最判平成10年2月13日は、「通行地役権(通行を目的とする地役権)の承役地が譲渡された場合において、譲渡の時に、右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、譲受人は、通行地役権が設定されていることを知らなかったとしても、特段の事情がない限り、地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらないと解するのが相当である」として、登記を経なくても通行地役権が承役地の譲受人に対抗できる場合があること示しました。

相隣関係

次の記事

私道の利用について