遺言書の有効性について争いがある場合
相続の際、遺言書について紛争が生じる場合があります。遺言書は法律によって形式的要件が定められていますので、その要件を満たしているか、あるいは、偽造されたものであるか、遺言者が遺言書を作成したときに遺言能力があったか、また、記載内容が不明確で効力を生ずるかなどについて争われることがあります。
遺産分割調停内で初めて遺言書の有効性が争点となる場合もありますが、遺産分割調停内で双方の主張の調整ができない場合は、遺産分割調停を取り下げた上で遺言の有効・無効について争うことになります。その場合、調停前置主義の関係から、原則として、家事調停を申立て調停で争い、これが不調の場合に訴訟で争うことになりなす。
そして、遺言書の効力を争うポイントとしては、遺言者の遺言能力が争点の場合は、遺言書作成時の遺言者の状態を病院のカルテや関係者の証言等により遺言書作成時に遺言能力があったかを争うことになります。偽造が争点の場合も、同様に遺言書作成時の遺言者の状態や遺言書の筆跡鑑定等により遺言者が遺言書を自ら作成したかを争うことになります。また、遺言書の記載内容の解釈に争いがある場合は、遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく、 遺言者の真意を探究すべきであり、 遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたっても、 単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出してその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、 遺言書の全記載との関連、 遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究して当該条項の趣旨を確定すべき(最高裁昭和58年3月18日)とされます。