再婚相手との養子縁組による実父の養育費支払い義務について
離婚後、親権者である元妻が再婚して再婚相手と子が養子縁組をし、実父が養育費支払い義務の免除を申し立てた事案で、裁判所は、実父が養育費免除の調停を申し立てた時点で養育費支払い義務がなくなると判断しました(東京高決令和2年3月4日)。なお、原審は、養子縁組時に遡ると判断していました。
子の親権者が再婚して再婚相手が子と養子縁組した場合、子の扶養義務は親権者とその再婚相手が負うことになることから、実費の扶養義務は免除されると考えれています。したがって、実父は養育費の支払い義務が免除ないし減額されることになります。免除か減額かは、親権者及び養親の資力によることになります。本決定も同様の判断に基づき、養親の資力が十分であることから、実父の養育費支払い義務が免除されるとしました。
そして、本決定は、免除の始期について原審と異なり調停申立時を判断しましたが、これは、養親が養子縁組してから調停申し立てまでに既に700万円以上の養育費を支払っていることから、養子縁組日まで遡ると親権者及び養親側に高額の返還義務が生じるという事情等を考慮したものと考えられます。その他審判例でも、養子縁組時点まで訴求する判断をしたものもあり、結局のところ、当事者の公平の観点か養子縁組時点まで遡及するか調停申立時とするか判断しているようです。
(2021.7.21)