管理組合が区分所有者に対し、管理規約違反を主張してパラボナアンテナの撤去と弁護士費用等を請求し認められた事案(東京地判令和2年8月11日)

1 事案の概要

 マンションの組合が、マンションのバルコニー及びルーフバルコニーの各手摺りに複数の衛星放送受信用パラボラアンテナを設置している区分所有者に対し、管理規約に違反していることを理由として、各パラボラアンテナの撤去と管理規約に基づき違約金として弁護士費用及び差止め等の諸費用を請求した事案。

2 裁判所の判断

(1)パラボナアンテナ等の撤去について

 マンションにおいては、住戸に接するバルコニーについて、区分所有者に専有使用権が認められ、区分所有者は通常のバルコニーとしての用法でこれを使用することができるものの、管理組合から管理上必要な指示がある場合は、それに従わなければならないとされていること、バルコニー及びルーフバルコニーに区分所有者が取り付けたパラボラアンテナ(本件アンテナを含む。)については、その部品の一部が落下したことがあることがうかがわれ、その結果、管理組合は、区分所有者に対し、本件アンテナ等の設置行為が管理規約に違反するとして本件アンテナ撤去を求めたが、区分所有者がこれに応じなかったことから、臨時総会決議を踏まえて、本件アンテナの撤去を求める訴訟を提起したことが認められる。そうすると、管理組合の本件アンテナの撤去要求は、組合員である本件建物居住者の安全を図るためなどからされたものと解することができ、その管理上必要な指示と考えられることから、管理組合は、本件規約に基づき、本件アンテナの撤去を求めることができると認められる。

(2)違約金としての弁護士費用等の請求について

 管理規約により、理事長は理事会の決議を経て、マンションの区分所有者に対し、管理規約等に違反する行為について必要な措置を請求するため訴訟その他の法的措置を追行することができ、この場合、相手方に対し、違約金としての弁護士費用等の諸費用を請求することができる。そして、区分所有者がバルコニーに本件アンテナを取り付けた行為が、管理規約に違反しており、そのため、管理組合が、訴訟代理人に、本件アンテナの撤去を求める訴訟の提起等を委任し、着手金、消費税並びに実費経費として57万円を支払い、さらに、その後に中間金として33万円を支払ったことが認められるから、管理組合は、管理規約に基づき、弁護士費用の既払分を違約金として請求できると解することが相当である。

3 コメント

 管理規約の定めに基づく請求であり、パラボナアンテナの撤去は、部品の一部が落下した事故があったことから認められ、弁護士費用等については管理規約に定めがあることから、既払金(着手金、実費、中間金、消費税)が認容されました。なお、管理組合も報酬分を請求していないことから、弁護士の報酬金については認容していません。