事業主のハラスメント対策について

1 はじめに
 令和元年6月5日に「女性の職業生活における活躍の推進等に関する法律等の一部を改正する法律」が公布され、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法が改正されました(令和2年6月1日施行)。
 本改正により、職場におけるセクシャルハラスメントの防止策について、事業主に相談したこと等を理由とする不利益取り扱いの禁止や自社の労働者が他社の労働者にセクシャルハラスメントを行った場合の協力対応についての定めが加わりました(男女雇用機会均等法第11条)。また、職場におけるマタニティハラスメントやケアハラスメントの各防止策について、事業主に相談したこと等を理由とする不利益取り扱いの禁止についての定めが加わりました(男女雇用機会均等法第11条の3,育児・介護休業法第25条)。そして、職場におけるパワーハラスメントについては、事業主に防止措置を講じることを義務付けるとともに、事業主に相談をしたこと等を理由とする不利益取り扱いの禁止についての定めが加わりました(労働施策綜合推進法第30条の2)。

2 各ハラスメントについて
(1)職場におけるパワーハラスメントについて
 職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるものをいい、①から③の全てを満たす必要があります。
(2)職場におけるセクシャルハラスメントについて
 職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応によりその労働者が労働条件について不利益を受けたり、性的な言動により就業環境が害されたりすることをいいます。
(3)職場におけるマタニティハラスメント、ケアハラスメントについて
 職場において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児・介護休暇等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した女性労働者や育児休業などを申出・取得した男女労働者の就業環境が害されることをいいます。  

3 事業主が雇用管理上講ずべき措置
(1)事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
 ・ハラスメントの内容、ハラスメントを行ってはいけない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発。
 ・行為者への厳正な対処方針、内容の規定化(就業規則等)と周知・啓発。
(2)相談・苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
 ・相談窓口を設置して周知する。
 ・ハラスメント相談等に適切に対応。
(3)職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
 ・事実関係を迅速かつ正確に把握する。
 ・被害者及び行為者に対する措置を適切に行う。
 ・再発防止に向けた措置を講じる。
(4)併せて講ずべき措置
 ・プライバシー保護に必要な措置と周知。
 ・不利益取り扱いがされないこと旨の定め(就業規則等)と周知・啓発。
 ・その原因や背景となる要因を解消するための措置(マタハラ、ケアハラについて)。

(2025.1.18)