リフォームトラブルについて

 リフォームに関するトラブルには、訪問販売業者により不必要、過剰なリフォーム契約を結ばされるなどの契約自体に関するトラブルと、リフォーム工事の内容に関するトラブルに大きく分けられます。
 前者の場合は、特定商取引法の訪問販売に該当する可能性がありますので、これに該当すれば、法定書面を受領してから8日以内であればクーリングオフが可能です(同法9条1項)。なお、法定書面とは、法に定められた記載事項(リフォームの場合は役務の内容として工事の具体的内容を記載する必要があります)が記載されていなければならないことから、契約締結時に交付された書面が法定書面として不備があれば(例えば、工事内容として「〇〇工事一式」としか記載がない場合等)、法定書面交付の要件を満たさず、契約締結から8日を経過していてもクーリングオフが可能となります。また、クーリングオフ期間を過ぎていても、契約締結時の説明に不実告知等があれば契約を取り消すことができます(特定商取引法6条1項6号)。上記のような訪問販売に該当しなくても、契約締結時に不実告知等があれば消費者契約法による取り消しも考えられます(消費者契約法4条1項1号)。その他、リフォーム業者が嘘を言って契約を締結した場合などは、民法による詐欺取り消し(同法96条1項)や錯誤無効(同法95条)の主張も考えられます。
 一方、上記のような契約上の問題ではなく、リフォーム工事の内容に関するトラブルも多く発生しています。一つの原因としては、リフォーム工事は小規模な工事が多く、建設業の許可を取得していない業者も多く参入していることから、業者によって知識、技術にバラつきがあり、施工不良等のトラブルが発生しているものと考えられます。また、小規模工事であることから、詳細な図面や仕様書、見積書が作成されてないことが多く、そのため工事内容の特定ができず、契約通りの工事がされたか否について争いとなる場合も多くあります。更には、リフォーム工事は、既存建物を改修することから、工事の途中で当初は想定していなかった追加工事や変更工事が必要となる場合があり、こうした追加工事や変更工事の合意があったか、当該工事の費用を追加で支払う合意があったかなどの争いが生じることもあります。同様に、既存建物を改修するという特質から、リフォーム工事後に不具合が発生してもそれが既存建物の瑕疵が原因なのかリフォーム工事の施工不良が原因なのか判然とせず争いとなる場合もあります。
 そして、上記のような争いが生じた場合、裁判所がどのように判断するかは、結局のところ、当事者がどのような合意をしたかというところにかかってきます。したがって、契約書や見積書に概括的な記載しかない場合は、事前打ち合わせや工事中の打ち合わせ内容に関する資料を集め、記憶に基づき打ち合わせから工事完了、不具合の発生までの経緯を時系列に整理し、契約内容を特定することが重要となります。
 もっとも、争いとなっている事案は、こうした資料をもってしても合意内容を明確に特定できない場合が多く、その場合は、リフォーム工事の目的、一般的な施工基準、工事費用等から当事者の意思を合理的に解釈することになります。例えば、ある工事を行うか行わないかが争いとなっている場合、当該工事が見積書に明示されていなくても、リフォームの目的を達成すために当該工事が当然必要となるようなもので工事費用全体からみても当該工事を含んでいると解しても不合理でないようなときは、当該工事についても合意があったと認定される可能性が高いと考えられます。また、追加工事による追加費用の支払いの合意について明確な証拠がなく争いとなっているような場合、当該追加工事が当初の予定の人工内で収まるような簡易な工事であるようなときは、サービス工事で追加費用は発生しないと判断される可能性が高いと考えられます。一方で、グレードアップ工事等で、ある程度の追加費用が見込まれるような工事の場合は、追加費用の支払いの合意について明確な証拠がなくても、当事者の合理的意思解釈として、グレードアップ工事についての合意(黙示含む)がある以上、追加費用の支払いについても合意が成立していると判断される可能性が高いと考えられます(東京高判昭和56年1月29日・判タ437号113頁参照)。
 以上のとおり、リフォーム工事ではトラブルとなる可能性が一定程度あることから、こうしたトラブルを回避するため、リフォーム契約を締結するに際し、適切な業者を選定し、しっかりと現在の家屋の状況について事前に調査をしてもらい、具体的なリフォーム内容について業者と綿密に打ち合わせをし、どのような資材を使用し、どのようなリフォームを行うかわかるように詳細な仕様書、見積書を作成してもらい、工期についてもしっかり定め、疑問点についてはしっかり確認した上で契約を締結することが必要となります。また、業者が住宅瑕疵担保責任保険法人のリフォーム瑕疵保険に事業者登録していることも確認すべきです。なお、保険の加入は個別の工事ごとに必要となります。なお、建築工事は精密機器の製造ではありませんので、機能上問題なく、美観上もそれ程問題とならないものは施工誤差として瑕疵と判断されない可能性がありますので、その点には注意が必要です。