マンション外壁部分のショーウィンドウ等が専有部分か共用部分か、専用使用権が設定さえれているか争われた(東京地判令和4年1月28日)
1 事案の概要
本件は、マンションの管理組合が、区分所有者に対し、マンションの共用部分に該当するショーウインドウ等に看板等を設置するなどして権原なく使用しているとして、管理規約を根拠に共用部分の妨害排除請求権及び妨害予防請求権に基づいて、看板等の撤去を求めるとともに、ショーウインドウ等の使用の禁止を求めた事案。
主たる争点はショーウインドウ等がマンションの専有部分か共有部分か、当該区分所有者に専用使用権があるかないかである。
2 裁判所の判断
(1)ショーウインドウ等が専有部分から共用部分かについて
区分所有法は、一棟の建物を区分所有権の目的となる専有部分とそれ以外の共用部分に分け、一棟の建物のうち、構造上区分され、独立して建物としての用途に供することができる建物の部分を「専有部分」という旨定めるとともに(同法2条3号、1条)、専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び規約により共用部分とされた附属の建物を「共用部分」という旨定め(同法2条4号、4条2項)、共用部分については、区分所有者全員の共有に属し(一部共用部分については、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。同法11条1項)、各共有者は、共用部分をその用法に従って使用することができること(同法13条)、共用部分の管理に関する事項は、原則として、集会の決議で決すること(同法18条1項)などを定め、共用部分について民法に定める共有に関する規定とは異なる規律を設けている。
ショーウインドウ部分及び看板部分は、建物の外壁の外側に位置しているのであって、マンション内の特定の専有部分と接続していないという構造であり、特定の区分所有者に限定されない様々な使用者の目的に応じて、ショーウインドウあるいは看板として様々な物の陳列や掲示をするという用途が予定されている形状等であるということができる。ショーウインドウ部分及び看板部分のかかる位置、構造、用途、形状からすると、ショーウインドウ部分及び看板部分は、それ自体が構造上あるいは利用上の独立性を有するものとして区分所有権の目的たる建物の部分に該当するものではないことはもとより、特定の専有部分たる建物の部分の一部に該当するものでもない。また、ショーウインドウ部分及び本件看板部分は、いずれもマンションの外壁の外側の空間に存在し、当該空間内に設置されたガラス扉等とともにショーウインドウとして使用することや、看板をはめ込むことによって看板として使用することができる設備であることからすると、ショーウインドウ部分及び看板部分は、マンションの建物本体である外壁の一部に該当するものと認めるには疑問が存するものの、いわゆる躯体部分の上塗り部分と同様のものであり、建物に備え付けられ、その構造上及び効用上、建物と不可分の関係にあるものとして、マンションの建物の附属物であると認めることができる。そして、ショーウインドウ部分及び看板部分は、マンションの外壁の外側に存在しており、特定の専有部分と接続していないことからすると、その位置や構造に照らし、特定の専有部分の区分所有者による排他的使用が当然に予定されているものとはいい難いから、区分所有法2条4項にいう専有部分に属しない建物の附属物に当たり、かつ、区分所有者全員の共有する共用部分に当たると認めるのが相当である。
(2)区分所有者に専有使用権があるかについて
マンションの建築計画の段階から、被告である区分所有者が賃借人が使用するためにショーウインドウ部分及び看板部分が設置されることが予定され、マンション建築時及び建築後において、被告である区分所有者あるいはその賃借人がショーウインドウ部分及び看板部分が管理使用することについてマンションの区分所有者も異議なく承認していたと認められるのであるから、マンションが建築された当初、マンションの区分所有者全員の間において、ショーウインドウ部分及び看板部分を被告が排他的に使用することができる旨のいわゆる専用使用権を設定する旨の黙示の合意が成立したものと認めるのが相当であるとした。そして、特定の区分所有者に共用部分の排他的使用を認める専用使用権は当事者間の合意によって設定される債権的権利であり、必ずしも管理規約によって定めることを要するものではなく、共用部分の共有者である区分所有者全員の合意によって設定することができるのであるとした。
3 コメント
1棟の建物のうちの建物の部分あるいは附属物が、区分所有法2条3号にいう専有部分に当たるのか、同条4号にいう共用部分に当たるのかは、同法4条2項所定の規約による共用部分を除き、その構造や性質から法律上決せられるものである解され、これを前提として判断しています。また、共用部分について特定の区分所有者に専用使用権を設定するには、管理規約で定める必要はなく、共有者全員の合意によって設定できるとし、マンション建設時から現在に至る状況を踏まえ、黙示の合意を認めました。