取締役の解任について(非公開会社の取締役会設置会社の場合)
取締役を任期途中で解任するためには、定款で決議要件が加重されている場合や累積投票により選任された場合を除き、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数により決します。(会社法341条)。
そこで、取締役の解任を求める場合は、株主総会の開催が必要となります。定時株主総会での解任を求めるのでなければ、臨時株主総会の開催が必要となります。会社が取締役を解任しようとする場合は、取締役会を開いて対象役員の解任を議題とすることの決議を経て、株主総会の招集手続を行う必要があります(会社法298条1項・4項)。株主(総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有すること必要。定款でこれを下回る割合を定めた場合はその割合)が取締役の解任を求める場合は、取締役の解任を議題として株主総会の開催を請求することになります。この請求があったにもかかわらず、請求日から8週間以内の日を株主総会とする招集通知が発せられない場合や遅滞なく招集の手続きがとられない場合は、裁判所の許可を得て開催することになります(会社法297条)。解任決議が否決された場合は、役員解任の訴えを提起する方法もあります。なお、取締役会設置会社は取締役が3人以上必要となりますので(会社法331条5項)、解任により取締役が3人未満となってしまうような場合は、新たに取締役を選任する必要があります。定款で取締役の人数を定めている場合はその人数に適合する必要があります。非公開会社の場合は定款で取締役を株主に限ると定めることができるので、この点にも注意が必要です。
取締役解任の法的リスクとしては、正当理由がなければ会社は損害賠償責任(残りの任期の報酬額相当)を負います(会社法339条2項)。正当理由としては、職務遂行上の法令・定款違反行為、心身の故障、職務への著しい不適任等が挙げられます。また、経営上のリスクとしては、取引各社への影響、解任された取締役の競業他社への就業による会社機密の漏洩等が考えられます。更に、解任された取締役が代表取締役で会社の債務の個人保証をしていた場合はその個人保証をどうするか、取締役が株主で合った場合にその株式をどうするか、退職慰労金規定がある場合は退職慰労金を支給するべきか等の問題も生じます。
なお、交渉の結果、取締役が辞任を申し出た場合は、辞任届を取締役会で受理したときに効力が生じます。辞任届は将来の日で問題ありません。