名誉棄損に当たる内容をリツイートした者の法的責任について
昨今、SNSによる誹謗中傷が社会的に大きな問題となっています。最近でもテレビ番組の出演者がツイッターの誹謗中傷により自殺するなど悲しい事件が起きました。そこで、ツイッターによる名誉棄損行為に関する興味深い判決が昨年出されましたのでここで紹介をしたいと思います。
事件の概要は、以前に府知事、市長を経験し、現在は弁護士、コメンテーター等として活躍している原告が、被告であるジャーナリストのリツイートにより名誉を棄損されたとして損害賠償を求めた事案です。本事案の特徴は、被告自身が名誉棄損にあたるコメントを記載したのではなく、名誉棄損に当たる事実が記載された内容のツイートをそのままリツイートしているという点です。つまり、名誉棄損に当たる他人のツイートをリツイートしただけの者も法的責任を負うかということが問題となりました。
この点について、原告は、被告がコメントを付さずにリツイートしていることから、一般の閲読者にとっては被告が元のツイートを原文のままの状態で読んで欲しい考えて投稿したものととらえるのが普通であるから、リツイート自体が被告自身の発言ととらえられるべきであると主張しました。これに対して、被告は、あくまでも発言者は元ツイートをした者であり、被告自身を発言者ととらえるべきではないと反論しました。これらについて裁判所は、「何らのコメントも付加せず元ツイートをそのまま引用するリツイートは、ツイッターを利用する一般の閲読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、例えば、前後のツイートの内容から投稿者が当該ツイートをした意図が読み取れる場合など、一般の閲読者をして投稿者が当該リツイートをした意図が理解できるような特段の事情の認められない限り、リツイートの投稿者が、自身のフォロワーに対し、当該元ツィートの内容に賛同する意思を示して行う表現行為に該当すると解するのが相当である」として、元ツイートをそのまま引用するリツイートをした被告がそのリツイートの内容について責任を負うべきとしました。裁判所もコメントを付さずにリツイートした場合に直ちに元ツイートに賛同したものと評価すべきとしている訳ではありませんので、妥当な内容の判決であると考えます。
なお、本事案は、上記争点のほかに違法性阻却事由や損害の有無等についても争いとなっていますが、従前の最高裁の判例に基づき判断され、本事案では違法性阻却事由はなく、損害を33万円(弁護士費用含む)と認定されています。
以上のとおり、安易に他人のツイートをリツイートとすると法的責任を負うこともありますので注意が必要です。
(大阪地判令和元年9月12日・判タ1471号121頁)