就業規則について

 就業規則とは、労働者が就業上順守すべき規律及び労働条件に関する具体的内容を定めたもので、常時10人以上の労働者を使用する使用者に作成と労働基準監督署への届出が義務付けられています(労基法90条)。常時10人以上の労働者を使用しているか否かは、個々の事業場単位で判断されます。そして、この10人とは、正社員だけでなくパートタイム労働者等も含まれますので、例えば、正社員9人、パートタイム労働者3人という事業所も含まれます(派遣労働者は含まれません)。この場合、パートタイム労働者等正社員と労働条件が異なる労働者がいる場合は、就業規則内に特則を設けたり、別の就業規則を作成する必要があります。そして、就業規則の作成に当たっては、労働者の意見聴取等の一定の手続きが必要になります。
 また、就業規則が労働契約の内容となるためには、その内容が合理的であり、内容が労働者に周知されていることが必要です(労契法7条)。ここでいう周知とは、労働者が知ろうと思えばいつでも就業規則の存在や内容を知りうる状態にしておくことをいい、労基法106条1項に定める方法に限りません。なお、就業規則のうち法令又は当該事業場について適用される労働協約に反する部分は無効となります(労基法92条1項)。
 上記のように、就業規則は労働者が就業上順守すべき規律及び労働条件に関する具体的内容を定めたものですので、その内容に不備があれば会社運営に支障をきたすおそれがあります。また、当初は問題のない就業規則であっても、社会の変化や企業の経営環境の変化等により就業規則の変更が必要となる場合がありますので、必要に応じて就業規則の変更も必要となります。なお、就業規則を変更することにより労働条件を不利益に変更する場合は、変更後の就業規則の変更が合理的であり、これを周知することが必要となります(労契法10条、最判昭和43年12月25日)。就業規則の変更が合理的であるかどうかは、①労働者が受ける不利益の程度、②変更の必要性の内容・程度、③変更後の就業規則の内容の相当性、④代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、⑤労働組合等との交渉経緯、⑥他の労働組合または他の従業員の対応、⑦同種事項に関する我が国社会における一般的状況を総合考慮して判断されることになります(労契法10条、最判平成9年2月28日)。なお、個々の労働者が個別に合意をした場合は、それが労働者の真意によるものであれば当該労働者は変更後の就業規則に拘束されるものと考えられます。
 なお、就業規則に定めがなくとも、同種行為が長期間にわたって反復継続され、それが労使双方の明示の意思に反することなく、就業規則、労働協約等により労働条件を定める権限を有する者か、実質上これと同視しうる地位にある者の規範意識となっている場合は、労使慣行として法的拘束力をもつ場合があります。