注文した住宅の瑕疵の有無が争われた事案(東京地判令和5年2月1日)

1 事案の概要

  本件は、2棟の一戸建て住宅の新築工事の設計及び施工を一括して発注した者が、工事に瑕疵がある等と主張して、建築会社に対し、①工事の瑕疵について、請負契約上の瑕疵担保責任に基づく瑕疵修補に代わる損害賠償請求及び②被告が工事完成後のメンテナンスを行っていないことについて、メンテナンス合意違反の債務不履行に基づく損害賠償請求として、補修費用等及び遅延損害金の支払を求めた事案。
 主たる争点は、①各種瑕疵の有無と損害額、②損害賠償請求権の期間制限、③慰謝料請求の可否についてである。

2 裁判所の判断

(1)各種瑕疵の有無について

ア 鉄柱の根がらみを切断した瑕疵について
 根がらみを切断するに当たっては、施工者として、鉄柱の設置目的を考慮し、各鉄柱の固定性を確保すべく、その基礎構造計算の上、支柱の基礎形状や根入れ深さの検討を行うべきであった。それにもかかわらず、これらの検討をせず根がらみを切断したことにより、各鉄柱の固定度を低減させことは、契約上求められるべき水準に達しない施工をした瑕疵があるとした。なお、サービス工事であるとしても、施工水準に満たない施工は許容されるものではないとした。

イ 基礎前面の被り圧不足について
 基礎全面においてかぶり厚が不足していた部分は、補修工事により補修され、補修部分の基礎の質及び耐力が低下していることを認めるに足りる的確はなく、一定期間、定期的な点検及び防水材の塗布が必要であることを示す的確な証拠はなく瑕疵ではないとした。

ウ 基礎のシース筋の過大な台直しを行った瑕疵について
 台直しを行ったシース筋の一部に、鉄筋コンクリート造の配筋の指針として規定された傾斜の基準(日本建築学会の鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説)である6分の1を超える傾斜となったこと部分があり、構造耐力が正規のシース筋よりも劣る状態となっていることが認められることから、その部分については、一般的な施工水準として許容されず、あるべき施工内容に関する当事者の合理的意思に反し瑕疵に該当するとした。なお、注文者は、修復不能な瑕疵と主張したが、裁判所は修復可能とした。

エ ボイド(紙製の円筒)を残存した瑕疵について
 ボイドの除去作業を行ったものであり、その多くが基礎の中に残っていることを認めることはできず、仮に一部残存していたとしても、残存しているボイドがどの程度あって、それがどのような状態となることにより基礎に影響を及ぼすかという機序が明らかとなっているものではなく、ボイド全てを取り除かない場合、ボイドが水分を吸ってしまい、近くの鉄筋に悪影響を及ぼすことになるとの原告の主張については採用できないとした。

オ 主要鉄筋を切断した瑕疵について
 主要鉄筋を切断した事実は認められるが、他方、建築会社は、主要鉄筋の補強のため、当該箇所にステンレス板を張り、壁面全体にGRC板を張って、新たな壁板を設置したり、炭素繊維による補強工事を行ったりしたこと、その結果、補強後の本件1の建物は、構造計算上、問題がない状態となっていることが認められ、相当な補修がされているものと評価でき、瑕疵に当たらないとした。

カ 換気システムの瑕疵について
 喚起ステムは、対象建物において、想定されていたどおりの空気の流れを発生させることは困難であったことから、当該換気システムの設置という設計自体に問題があり、設計瑕疵があったとした。なお、損害としては、設置費用のみ認め、注文者側が主張した他のシステムの設置費用までは認めなかった。

キ 塩ビ管や電気コードが貫通している基礎の内側に防錆塗料を塗布した瑕疵について
 建物の外部北側の分電盤下の電気幹線のスリーブ及び外部西側の基礎電気幹線のスリーブに、防錆処理のためにタールエポキシを塗布したことが認められるが、通常、埋設配線はCD・PF蛇腹管に納めて埋設するため、揮発性トルエン(タールエポキシ)の影響はないことがうかがわれ、また、電気配線に揮発性トルエン(タールエポキシ)が直接塗布されたことを認めるに足りる的確な証拠はないから、施工が施工水準に劣るものであることを認めることはできないとした。

ク 給排水管の図面を作成していない瑕疵について
 建築会社は、建物の設計及び施工を一括して請け負ったものであるから、完成後の給排水管の配管図を作成し、注文者に対して配管の状況が判明する資料を引き渡す債務を負っていると認められ、瑕疵に当たるとした。

(2)損害賠償請求の期間制限について

 当事者間の交渉経緯において、建築会社の担当者が「鉄筋の切断および台直しの点について、基本的に当社側の落度により原告にご迷惑とご心配をおかけしていることから、「出来るだけのことを致します」と申し述べて、瑕疵に当たるかどうかに関わりなく、原告の要望、苦情に応えてきたものです。」と記載されているとおり、建築会社側として、誠意をもって対応したいとの努力目標を述べたものであり、直ちに何らかの合意をしたとは認められない余地があるものというべきであることから、これをもって注文者が期間内に権利保存行為を行ったとは言えないとした。

(3)慰謝料請求について

 瑕疵の有無、程度、その他本件の一切の事情を考慮しても、本件において、注文者に金銭をもって慰謝すべき程度の精神的損害が生じたとは認められないとした。

3 コメント

 瑕疵の判断について、技術的なものについては、的確な技術的な根拠が示されない限り、裁判所としても安易に瑕疵とは認めません。また、慰謝料については、通常、瑕疵が修補されれば足りるとし、認めない傾向にあります。また、権利保存行為は客観的に明確に行うことが必要です。