期間の定めのある賃貸借契約における借主側からの中途解約(違約金)について
一般的に、居住不動産の賃貸借契約は期間が2年程度、事業用は2年から4年程度のものが多く見られます。そして、中途解約に関しては、居住用は1カ月前、事業用は3ヵ月前に申し入れることを条件とするものが多く見られます。そして、こうした内容であればあまり問題となることはないのですが、中途解約をする場合に多額の違約金を支払うことが契約上定められている場合に問題となります。
賃貸人側としては、契約期間の賃料収入を期待していますので、中途解約によるリスクを軽減するために違約金を設けたいと考えるのは普通であり、法律上も禁止されていません。もっとも、違約金の額が高額になると、賃借人からの解約が事実上不可能になり、賃借人に著しい不利益を与えることになることから、一定額以上の違約金について公序良俗に反して無効と評価される場合もあります。また、賃借人が事業者でなく個人の場合は、消費者契約法が適用されますので、同法により違約金に関する条項が無効と判断される場合があります。具体的には、違約金に関する条項が賃借人に一方的に不利益で、解約権を著しく制約する場合には、消費者契約法10条に反して無効となったり、同法9条1号に反して一部無効となる場合があります。
実際の裁判例を見ますと、個人が居住用として借りた建物を中途解約(違約金2カ月分の賃料)した事案で、裁判所は、一般の居住用建物の賃貸借契約においては、途中解約の場合に支払うべき違約金額は賃料の1ヶ月(30日)分とする例が多数とであり、次の入居者を獲得するまでの一般的な所要期間としても相当と認められるなどとして、違約金は1カ月分が相当であるとしました。
また、契約期間4年で事業用建物を借りていた借主が10カ月で中途解約したところ、残りの期間の賃料及び共益費相当額を違約金として支払いを求められた事案で、裁判所は、約3年2か月分の賃料及び共益費相当額の違約金が請求可能な約定は、賃借人に著しく不利であり、賃借人の解約の自由を極端に制約することになるから、その効力を全面的に認めることはできないとして、1年分のみ請求を認めました。
何か月分の賃料相当額であれば違約金として有効であるか否かは、契約に至った事情や物件の性質等も関係すると考えられますので、一義的に定まるものではありませんが、上記裁判例は一つの目安となります。