管理費滞納に対する先取特権に基づく回収ついて
マンションの管理費の支払いがなされない場合、訴訟により債務名義を取得し、強制執行により回収する方法もありますが、区分所有法には先取特権に関する規定がありますので(区分所有法7条)、これに基づき回収する方法も考えられます。区分所有用法に基づく先取特権は、不動産及び動産上の先取特権で、共益費用の先取特権(民法306条1項)とみなされます。したがって、他の一般先取特権(民法306条)と競合する場合は、これに優先することになります(民法329条1項)。一方、動産の先取特権(民法311条)や不動産の先取特権(民法325条)には劣後します(民法329条2項)。
そして、区分所有法における先取特権は、債務者の区分所有権及び建物に備え付けた動産(建物の使用に関連して常置された動産)に対して行使することになりますが、まずは動産の競売代金から弁済を受け、それでも回収しきれないときに債務者の不動産の競売代金(担保不動産競売)から弁済を受けることになります(民法335条1項)。そして、不動産については、区分所有者の借入金について抵当権が設定されている場合も多いと考えられますが、抵当権と先取特権の優劣については、抵当権が未登記であれば先取特権が未登記でも優先し、抵当権に登記があれば未登記の先取特権に優先し、両方に登記があれば登記の前後で優劣が決まります。
区分所有法の先取特権は以上のような性質のため、実際に利用されることは少ないですが、抵当権の設定状況等から先取特権により管理費の回収が見込める場合は訴訟によらずとも回収が可能となります。