給与ファクタリング取引の有効性について
ここ最近、給与ファクタリングという言葉を耳にすることがあると思います。これは、給与支給日前に給与債権を給与ファクタリング業者に譲渡し、譲渡した給与債権の額から一定額を差し引いた額のお金を業者から受け取り、給与支給日に譲渡した給与債権相当額を業者に支払うというものです。
こうした給与ファクタリング業者が行っている内容は、給与債権の譲渡人が受領した金額を元金として、業者に支払ったお金との差額を利息とすると、貸金業法の定める上限利息を大幅に超過することから、貸金業法や出資法に違反することにならないか問題となっていました。
そして、この点について判断した東京地判令和2年3月24日の裁判例があるので紹介したいと思います。本裁判では、給与ファクタリング業者が、給与債権の譲渡人ではなく、給与支払義務のある使用者に対して支払を求めた事案です。
裁判所は、まず、①給与は労働基準法24条1項本文により、労働者に直接支払わなければならず、譲受人は使用者に支払いを請求できないことから(最判昭和43年3月12日)、譲受人は譲渡人に対して支払いの請求をしなければならず、結局のところ、給与ファクタリングの仕組みは経済的には貸付による金銭の交付と返還の約束と同様の機能を有するとみとめられるとしました。そして、②金銭の交付と返還の約束と同様の機能を有することから、給与ファクタリング業者による譲渡人に対する債権譲渡代金の交付は、貸金業法や出資法が規制する「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法」による金銭の交付であり、「貸付け」に当たるとしました。③その上で、本件では、年利850%を超える利息の契約をしたものと認められ、貸金業法42条1項の定める上限金利を大幅に超過するから本件ファクタリング取引は無効となり、これが有効であることを前提としたファクタリング業者の請求は理由がないとしました。
以上のとおり、ファクタリング取引の実質を見ると貸付けと判断できると考えますので、妥当判決であると考えます。