退職勧奨について
退職勧奨とは、労働者に対し退職の意思表示を自発的に行うように促すものであり、単なる事実行為と理解されています(最判昭和55年7月10日参照)。したがって、退職勧奨を行うこと自体が違法ということではありません。もっとも、回数やその手段・方法が社会通念上許容される範囲を逸脱した場合は違法評価される場合があります。具体的には、労働者が退職勧奨に応じない意思を明確にしているにもかからず、新たな条件を提示することなく退職勧奨を継続することは違法となる可能性が高いといえます。また、退職に応じなければ解雇するなどと労働者を圧迫して自由な意思決定を阻害したような場合なども違法と評価されるおそれがあります。もっとも、当該従業員に解雇事由がある場合は、それ自体違法な退職強要には当たらないとした裁判例があります。なお、退職勧奨に応じなかったことを理由に配転や降格等の不利益処分を行うことは、それ自体が退職に追い込むための不利益処分として無効となる場合がありますので注意が必要です。