マンション外壁のタイルの浮き、剥離等の瑕疵についての瑕疵担保責任の追及について
外壁のタイル貼りには乾式工法と湿式工法がありますが、浮き、剥離等の現象が発生して問題となるのは主として湿式工法の場合です。湿式工法には、コンクリートの躯体表面に張り付けモルタルで直接タイルを張る方法と、コンクリートの躯体表面にモルタルの下地を塗り、その後に張付けモルタルを塗り付けてタイルを張るという方法があります。これらの方法による場合、施工不良としてコンクリート躯体表面の清掃不良(型枠剥離剤、ゴミ等の残置)、給水調整不良、目荒らし不良、貼り付けモルタルの塗り置き時間の管理不十分、タイルの裏足と貼り付けモルタルの圧着不足等が挙げられます。
そして、剥離の原因を調査する方法としては、実際には剥離したタイルや剥離した躯体部分の状況の確認や浮き部分を実際に剥がして確認する方法や赤外線を利用した調査方法等があります。もとも、調査で原因が明確とならない場合も多く、経年劣化も生じることから剥離や浮き部分の全体に占める割合がどれくらいに及ぶかも瑕疵の判断の参考とされます。一般的に5年で3%以下、10年で5%以下は自然劣化の範囲内と考えられています。なお、参考までに、大阪地裁の検討グループは、剥落・浮きについて、5年以内0%以上、5年超10年以内の3%以上、10年超15年以内5%以上、15年超20年以内10%超は施工不良が推認できるとした判断基準を提言しています(判タ1438号48頁)。
外壁タイルの瑕疵に関する裁判例としては、基本的安全性に欠けるとして不法行為責任を認めた最判平成19年7月6日が有名ですが、施工状態を詳細に事実認定して、タイルの剥離について施工不良があり瑕疵があるとしたものとして東京地判平成27年3月17日などがあります。
なお、訴訟となった場合、原告適格が問題となる場合があります。マンションの区分所有者が共有部分に関する瑕疵担保責任追及のため訴訟を提起する場合、共用部分の共有持分に基づき損害賠償等の請求をすることも考えられますが、一元的解決のため管理者が区分所有者に代わって訴訟を追行するのが一般的です。もっとも、専有部分が転売された場合に、当初の区分所有者から譲受人に対して瑕疵担保責任に基づく請求権が移転されていないときは、管理者が訴訟提起することはできないと考えられます。この点について、東京地判平成28年7月29日は、管理者について定めた区分所有法26条4項は区分所有者全員のために訴訟追行することを認めたものであり、区分所有者が一部でも抜けた場合は適用されないと判示しました。なお、この場合、区分所有者は、各自個別で訴訟を提起するか権利を有している者全員で訴訟追行する必要があります。