集合住宅における高圧一括受電方式変更について
高圧一括受電方式とは、マンション等の集合住宅において区分所有者が電力会社と個別に契約をするのではなく、管理組合等が電力会社と高圧電力契約を行い、管理組合等と区分所有者との間で電力供給契約を結ぶ方式のことをいいます。この方式を採用することにより電気料金の削減が図れるということで、高圧一括受電方式を採用している集合住宅もあります。
もっとも、既存の集合住宅がこの方式を採用するには、高圧電力契約を行うことについて総会決議を経る必要があり、区分所有者が個別に電力会社と締結している契約を解約しなければなりません。全ての区分所有者がこれに同意して個別に締結している電力契約を解約すれば問題はありませんが、これに応じない区分所有者がいる場合に問題が発生します。具体的には、高圧一括受電方式への変更について総会決議がなされ、区分所有者が個別に電力会社と締結している契約を解約することが義務づけられた場合、区分所有者は電力会社との契約を解約する義務を負うかという問題として現れます。
この問題に関し、管理組合が解約に応じない区分所有者に対し、不法行為に基づく損害賠償請求をしたという事案があり、一審、二審は、解約義務があるとして、解約を拒否している区分所有者に対し、不法行為に基づく損害賠償責任を認めましたが、最高裁は、区分所有者が個々に電力会社と締結している契約を解除する義務はないと判断しました。(最判平成31年3月15日)。具体的には、「高圧受電方式への変更をすることとした本件決議には、団地共用部分の変更又はその管理に関する事項を決する部分があるものの、本件決議のうち、団地建物所有者等に個別契約の解約申入れを義務付ける部分は、専有部分の使用に関する事項を決するものであって、団地共用部分の変更又はその管理に関する事項を決するものではない。したがって、本件決議の上記部分は、(区分所有)法66条において準用する法17条1項又は18条1項の決議として効力を有するものとはいえない。」と判示し、損害賠償請求を棄却しました。