管理組合が前任の管理者に対して、特別修繕費を回収せず時効により消滅させたとして損害賠償請求した事案(東京地判令和4年9月30日)

1 事案の概要

 本件は、マンションの管理組合が、前任の理事長で区分所有法25条所定の管理者であった者に対し、同人が区分所有者らから特別修繕費の回収を怠った結果、特別修繕費債権が時効消滅したことにより同額の損害を被ったと主張して、債務不履行(善管注意義務違反)に基づく損害賠償請求をした事案である。

主たる争点は、前管理者の善管注意義務違反の有無、損害である。

2 裁判所の判断

(1)前任管理者の善管注意義務違反の有無について

 前管理者が特別修繕費の回収、管理をしていたと認められ、未払いを放置し、後任の理事長にも引き継がなかったことが善管注意義務違反に当たるとした。

(2)損害額について

 後任の理事長が速やかに回収に当たれば時効にかからなかったであろうとの主張については、前理事長が未収金の事実について引き継がなかったことにより、その発見が遅れたのであるから前理事長と損害の間に相当因果関係があるとした。

3 コメント

 管理者は善管注意義務を追うことになるから(区分所有法28条により委任の規定が準用される)、これに違反する損害賠償責任を負うことになります。後任への引継ぎも重要な業務となります。