退職金請求権、及びその確保方法について
退職金は、賃金の後払い的性格や功労報償的性格を有するものですが、退職金が、法令、労働協約、就業規則、労働契約等に基づいて明確に規定されている場合は、労働基準法11条の賃金として退職者には退職金請求権が生じます。他方で前記のような明確な規定等がない場合でも、労使慣行として退職金が支払われていたような場合は、退職金請求権が生じる場合があります(東京地判昭和51年12月22日等)。もっとも、労使慣行が認められるためには、退職金支給の事実が長期間反復継続していた事実や労使にとって退職金支給が規範的意識として理解されるに至っていることが必要であり、この立証は簡単なものではありません。なお、退職金規定を所持していない場合は、会社に対して開示を請求し、会社が協力的でない場合は、労働基準監督署に会社が届け出た就業規則の閲覧請求をするという方法も考えられます。
そして、退職金の支給時期については、労働者から請求があった日から7日以内とされていますが(労働基準法23条1項)、就業規則に期限が定められていればそれに従うことになります。よって、支払時期を過ぎると年6パーセントの遅延損害金が発生します。なお、退職金請求権の時効は5年となっています(労働基準法115条)。
えられます。
以上のとおり、退職金については明確な根拠や労使慣行が認められた場合に請求権が生じますが、会社が支払いをしない場合には、一般先取特権に基づく差し押さえ等による対応も考えられます。一般先取特権に基づく差し押さえは、判決を待たずに裁判所の決定により主要取引銀行等に対して差し押さえを行うことができますので、会社としても労働者の請求に対しては真摯に対応する必要があります。