造作買取請求について
建物賃貸借契約において、賃貸人の同意を得て取り付けた造作は、賃貸借が契約期間の満了や解約申し入れにより終了するときに、建物賃借人から賃貸人に対して買い取りを請求することができます(借地借家法33条)。これは、賃借人が賃貸人の同意を得て自分で費用を負担して取り付けた造作(前賃借人が賃貸人同意を得て附加した造作を買い取った場合含む)について、建物賃貸借終了時に残存価値を回収できるようにしたものです。
造作買取請求権が行使されると、賃借人と賃貸人との間で造作について売買契約が成立したのと同一の効果が生じます。したがって、賃借人は賃貸人が造作の代金を支払うまで留置権や同時履行の抗弁権を行使して造作を引き渡さないことができます。もっとも、建物自体を留置し、明け渡しを拒むことはできません。借地借家法(平成4年8月1日施行)では造作買取請求権は任意規定とされていますので特約で排除することができますが、旧借家法では強行規定とされていたましたので、特約によっても排除することができません。
なお、造作とは、建物に附加された物件で、賃借人の所有に属し、かつ建物の使用に客観的便益を与えるもののことをいいます(最判昭和29年3月11日)。具体的には、レストラン用店舗の調理台やレンジ、食器棚、ボイラー、ダクト等の設備などが造作に当たります。一方で、家具、什器のように容易に取り払うことが可能で、取り払っても建物の価値が減じることのないものは造作に当たりません。
また、条文上、「期間の満了又は解約申し入れにより終了するときに」と規定されていますが、旧借家法が「賃貸借終了の場合において」と規定されていたことから、借地借家法においても、期間満了と解約申し入れによる終了に限定されず、合意解約のときにも造作買取請求権を行使できると考えられています。もっとも、合意解約の際は、造作の扱いについても話し合いに基づき処理することになるので、問題なることは少ないと考えられます。一方、債務不履行解除の場合については、判例は造作買取請求権の行使を否定しています。