事務所部分と住居部分の修繕積立金の負担割合の不均衡を是正する管理規約の変更決議の有効について争われた事案(東京地判令和4年3月31日)

1 事案の概要

 本件は、マンションの区分所有者がが、管理組合に対し、自らの共有持分の修繕積立金を増額した管理組合の総会における管理規約の改正決議が無効であるとして、その増額分につき、既払金の返還等及び未払分の支払義務がないことの確認を求める本訴請求と、これに対し、管理組合が、当該区分所有者に対し、同改正決議は有効であるとして、改正後の管理規約に基づく未払の増額分の修繕積立金の支払等を求めた事案。
 主たる争点は、①総会決議後の専有部分を取得した者は、総会決議を争うことができるか、②事務所部分の修繕積立金の増額(修繕積立金だけを見ると住居部分の1.5倍)が区分所有法30条3項に反するか、③将来請求の可否である。

2 裁判所の判断

(1)総会決議後の専有部分を取得した者は、総会決議を争うことができるかについて

 本件決議は管理規約に定める修繕積立金につき、事務所部分についてのみ負担を増加させる変更決議であり、同決議は事務所部分の区分所有者からの特定承継人である原告に対してもその効力が及ぶため(法46条1項)、総会決議後に専有部分を取得した者も本件決議の効力を争うことができると解すべきである

(2)事務所部分の修繕積立金の増額が区分所有法30条3項に反するかについて

 本件改正による事務所部分の修繕積立金の増額は、それ自体は住戸部分との不均衡を招くものといえるが、事務所部分と住戸部分の管理費の額も考慮すると必ずしも利害の衡平を害するものとはいえず(事務所部分が住居部分より割安)、このことは法30条3項が定めるその余の考慮要素を加味しても左右されない。なお、管理費と修繕積立金が使途目的を異にするが、区分所有法30条3項該当性の判断に当たり、これらを併せて検討することができないとは解されない。

(3)将来請求の可否について

 区分所有者の未払いが3年程続いていることから、将来請求の必要性を認めた。

3 コメント

 本判決は、区分所有建物を取得した者が自己に法的利害関係がある事項についての取得前の総会決議の効力を争うことができると判断しました。また、長期間修繕積立金の一部未払があったことから将来請求も認めました。
 本件のように、管理費の額などに不均衡がありこれを是正(増額)する管理規約の変更が行われた場合、区分所有法31条1項後段の同意の有無の要否が争点となる場合もあります。