普通解雇について
会社が労働者を解雇する場合、普通解雇、懲戒解雇、整理解雇があります。普通解雇とは、雇用契約における労働者の債務不履行を理由とする解雇で労働者の労働能力や勤務態度等を理由とする解雇です。懲戒解雇とは、労働者の債務不履行を理由とする解雇ですが、業務命令違反、職務規律違反等の企業秩序違反に対して懲戒処分として行われる解雇です。整理解雇とは、会社の経営悪化等の事情により行われる解雇です。
会社は、それぞれの解雇の要件を満たせば労働者を解雇することはできますが、労働者は雇用契約を結ぶことにより賃金を得て生活を維持していますので、当該解雇の有効性については、解雇権濫用法理に基づいて判断され(判例、労契法16条)、客観的に合理的な理由のない解雇や社会通念上相当でない解雇は無効となります。
普通解雇は雇用契約上の債務不履行を理由とするものですから、雇用契約の内容が問題となります。そして、雇用契約の具体的内容は就業規則等により定められることになりますが、就業規則には普通解雇事由として能力不足や勤務態度不良、協調性欠如などの事由が記載されているのが通常です。ただし、就業規則は常時10人以上の労働者を雇用する会社に作成と労働基準監督署への届出義務が課されていますので、これに該当しない中小零細企業では就業規則を作成していない会社も少なくないのが現状です。もっとも、就業規則に具体的な定めがなくても普通解雇ができない訳ではありません。雇用契約に当然に内包されている義務(意欲をもて仕事に取り組み、他の社員と協力し、一定の成果を出す等)の不履行があれば、解雇事由に該当することになります。その上で、実際に解雇ができるかどうかは、解雇権濫用法理に当てはめて検討することになります。
具体的には、能力不足や勤務態度不良、協調性欠如の事実が認められた場合も直ぐに解雇することはできず、注意等を行い改善の機会を付与したか、これらによる業務上の支障が重大か、配転等により業務上の支障を回避できないか等について検討することが必要です。その上で、何度か注意を与え改善の機会を与えたが反抗するばかりで改善がみられず、業務上の支障が重大で配転等によっても回避することが困難となれば解雇が有効となる可能性が高いといえます。更に言えば、解雇に至るまでに適切な懲戒処分を行うことも必要と考えられます。なお、改善の機会の付与や配転等の検討については、新入社員と一定の地位や能力を期待されて入社した者では異なります。また、会社の規模によっても異なります。例えば、数名の会社では一人の労働者の能力不足や勤務態度は会社への影響も大きく、配転等も事実上困難ですので、大企業よりは緩やかに判断されます。