境界に関する紛争について

 土地の境界には、公法上の境界と私法上の境界があります。公法上の境界とは、一筆の土地と一筆の土地の境目を意味します。これに対し、私法上の境界とは、土地所有権の境目を意味します。多くの場合は、公法上の境界と私法上の境界は一致することになりますが、一致しない場合もあります。一致しない場合の例としては、土地の一部を時効取得した場合や当事者が公法上の境界と異なる境界で合意した場合などが考えられます。
 通常、境界は、境界標によって明らかにされますが、境界標が無い場合や移動された場合、勝手に設置された場合などは、どこが境界となるか争いとなります。このように争いとなった場合、境界を接する当事者同士が合意して決めることもできますが、これはあくまでも私法上の境界であり、公法上の境界を決めることにはなりません。公法上の境界を決める方法としては、筆界特定手続という手続があります。これは、登記所に申請をして行うもので、筆界特定登記官が調査結果を踏まえ土地の筆界を特定するというものです。この手続は、筆界特定登記官の当該筆界についての認識を示すものであり、新たな筆界を形成するという法的効果はなく、行政処分でもないので不服申立を行うこともできません。また、これにより地積図等のデータが当然に職権で書き換えられる訳ではありません。ただ、公的な機関が行うものですので、当事者がこれを受け入れやすいということはあると考えられています。そして、この手続による特定に不服がある者は、境界確定訴訟を提起して争うことになります。境界確定訴訟を提起して判決が確定すれば、これを争うことはできなくなります。
 なお、公法上の境界を決めるにあたり重要な資料となるものは、法14条地図、公図、地積測量図、専有状況、公簿面積、境界標、自然の地形、道路、古文書、証言等です。
 また、境界標の設置の費用については、共同の費用をもってするとされています(民223条)。ただし、測量の費用は、その面積に応じて分担することになります(民224条)。